「こんなニュースがあったよ」


https://www.google.co.jp/amp/s/www.yomiuri.co.jp/national/20210527-OYT1T50283/amp/


渡されたものを読んで呆れた。


私、紙のニュースは読んでいるが、電気の?ニュースは読まない。

その電気ニュースによれば、埼玉県で公立中学校の男性教諭が教え子のSNSに、性的画像や不適切なメッセージを、合わせて1000件以上も送ったということで、懲戒免職になったそうだ。


最近、教員のワイセツ事件が増えていて国会などでも問題視されているくらいだから珍しくない(では困るのだが)ので、そのことにはビックリしない。

こんなことに懸命にならないで仕事をしっかりやりなよ。

命削るように仕事している先生たちがたくさんいるのに、なんてヤツだとは思う。


呆れて言葉も出なかったのは、こいつが教育局の聞き取りに対して

「生徒(相手)を笑わせたいという気持ちだった」

と話したというところ。


数年前に峠工房であった事件を思い浮かべて

「これって、発達障害の中学生みたいじゃん。

生徒じゃなくて先生がって笑い話にもならないよ。」


もちろん被害を受けた女生徒さんは本当に気の毒で、迷惑かけたなどという軽いもんじゃない。

一生にかかわる心の傷だ。


峠工房であった事件というのは、今でも「なぐるける事件」と語り草なのだが、当時中学生だった男の子が、何をどう勘違いしたのか、エロ路線がみんなに受け入れられるキッカケになる、みんなエロが好きなのだと確信してしまった末に起きたことだった。


当然のことながら、峠工房でそんなことを話したり見たりしていれば、たしなめられたり叱られたりした。

しかし誰彼構わず話していたので、たしなめたり叱ったりせずやんわりとした注意をしてくれる人や聞き流してくれる人などを見つけ出し、そういう対応だけを信じ確信を強め、ますます勢いづいてしまい、道を歩いていようがバスの中だろうが、エスカレートしていった。

そしてある日、バスで女の子の友人に

「見て見て、これ

と見せたのはDSに取り込んだエロ画像。

頭よりもでっかいおっぱいのネエちゃんのマンガ。

分かる人には分かるだろうが、駅のゴミ箱なんかによく捨てられている「家へ持ち帰るとマズイ」本から取り込んだのだ。

それを「確信に満ちて」女の子に「バスの中で」見せたのだ。

喜ぶと思って。

ここが悲しい。


本の出どころは往来できる距離に住む親族だった。

おとななのだから、自分のお金で何をしようと(悪事でなければ)何を趣味にしようとかまわないが、思春期の少年が自由に行き来する家で、「テーブルの上」に積み重ねておくのはさすがに


私たちが困ったのは、原因が家庭に近いところにあったこと。

気がつけば都度対応していたが、「現物」の力は強い。

ましてやそれが峠工房から離れ、簡単に行き来できるところにあれば、峠工房で「言われたこと」など敵わない。

そうなると、教育支援機関がどうこうする問題ではなくなり、私たちがあれこれ言えない。

家庭での対応を考えてもらわねばならない。

どうしたらいい?


それで間近に迫っていたイベントの日を選んで、お母さんに開催前の午前中来てほしいと頼み、ことの一部始終を話し、イベントが終わった後残ってもらい、最初に女の子から相談を受けた職員も交え話し合いましょうと約束した。

お母さんのショックは大きく気の毒だったが、私たちも今何とかしなければ大変なことになるという危機感が強かった。


イベントも終盤に差し掛かったころ、

「園長!大変だ!早く来て!早く!!」

と血相変えて呼ばれた。

行ってみると、鬼の形相のお母さんが息子をどなりつけて、殴ったり蹴ったり息子は部屋の隅で頭を抱えてうずくまって泣いていた。

ああ、時間を待てなくて親がぶちぎれたのだとすぐ察したが、こんな場合でもすでに親の身長を越している男の子が手向かいもせずにいる姿にびっくりするやら安心するやら変な気がした。


私に怒鳴りつけられて、我にかえった母は、怒り疲れて床に座り込んだ。

男の子に椅子に座るよう促し色々聞いた。


「みんなこういうのが好きなんだと思ってた。」

「こういう話をすると友達を作れると思った。」

「見せた子が喜ぶと思った。」


なんともおそろしいけれど痛ましい。

これほどまでに彼の中で勝手にエスカレートし、本人のみの確信となっていたにも関わらず、同じ家に住む家族の誰も気づかない。

しかも外部の人間は手出しできないこと。

年頃になれば、そうした情報に触れる機会も増えるし、興味が向くこともある。

その都度、峠では話し、たしなめ、叱り、家庭に報告して連携を図ってきた。

その辺が外部教育機関としての限界だ。


色々、彼がわかるように話したが、友達だと思っていた人たちに見せたことがどれほどの裏切り行為か厳しく叱った。

大きなため息をついて、ポロポロと涙をこぼした彼の姿を親に見てもらいたかったが殴る蹴るで精力を使い果たしたのか、座り込んで頭を抱えたままだった。

もったいない。


その後、母親の凄まじい「怒りの情熱」がどのように結実していったかはわからない。

高校生になってからはほとんど峠とのつながりは切れて知りようもない。


だが、仮に彼の思い込みグセが是正されないまま大人になるということがあれば、今回の埼玉の先生のような事件はあり得るというか、あるよねであり、ひとつの例にとどまらないであろうことが恐ろしい。

すでにあちこちの職場から「困ったさん」の例が峠にもたくさん寄せられている。

「殴る蹴る事件」の彼の成長、是正を祈ってやまない。